学長挨拶

東京医科大学医学総合研究所は、2008年に発足した「難病治療研究センター」を母体とし、本学のミッションである「患者にやさしい医療の実現のための研究・活動を通して、明日の医療を拓く医療人の育成」を具現化するために、同センターをさらに発展させる形で2010年1月に設立されました。「科学の力が未来を拓く」という理念のもと、本学の中長期的な戦略に基づく先駆的・先導的研究を推進する研究拠点として、現在、重要な役割を担っています。
本研究所の活動は、基礎医学研究・橋渡し研究を強力に推進する「研究部門」と、本学の研究活動を全学的にサポートする「共同利用部門」の二つに大別されます。
「研究部門」には現在、免疫制御研究部門、分子細胞治療研究部門、実験病理学部門の3部門が設置されています。各部門に所属する研究員によって、創薬、診断医薬品・技術開発、再生医療、疾患基盤研究、感染症対策といった領域で、先進的かつ高品質な研究成果が世界に向けて発信され続けており、本学の研究力の高度化に貢献しています。
「共同利用部門」では、東京医科大学病院のある西新宿キャンパスに「西新宿キャンパス共同研究センター」、基礎医学分野が集まる新宿キャンパスに「新宿キャンパス共同研究センター」の2つの共同利用センターを設置し、大学全体の研究活動に関する多様なニーズに応えるためのサポート体制を強化しています。
また、医学総合研究所の大きな特徴の一つとして、本学の学部と独立しているため、時代の変化に即応した柔軟な組織運営が可能である点が挙げられます。ポストコロナ社会における研究活動のニューノーマルを実現するため、研究のデジタル・トランスフォーメーション(研究DX)を推進し、新たな科学的手法の開発、魅力的な研究環境の構築、生産性向上のためのさまざまな取り組みを先導する役割を果たしています。
今後も、イノベーション創出の拠点として、本学の基礎医学・臨床医学の各分野間の共同研究の理想的なあり方を模索し、アカデミア間や産官学の連携強化を図ることで、本学の研究力をさらに発展させていくことを目指します。

所長挨拶
分子病理学分野 主任教授
東京医科大学の医学総合研究所は、東京医科大学の研究力の向上のため2010年に1月に設立されました。その後、研究所は付置研究所の組織となり、現在は、トランスレーショナルリサーチを強力に推進する研究部門と、研究の推進を全学的にサポート、底上げする共同利用部門が設置されています。特に共同利用部門は、2019 年に低侵襲医療総合開発センターと分子標的探索センターが医学総合研究所に加わり、さらに現在は、新宿キャンパス共同利用研究センター、西新宿キャンパス共同利用研究センターまた、疾患モデル研究センターが医学総合研究所内に設置されました。
また、研究部門は、免疫制御、分子細胞治療、難病分子制御という3つの研究室が最先端のトランスレーショナルリサーチを推進しています。
さて、本学のような医科大学の使命は、改めて述べるまでもなく「臨床」、「研究」、「教育」の3つの要素を高度に実践し、社会貢献をすることであります。その中で医学総合研究所の役割は「研究」の領域において極めて重要な役割を担うものと考えます。そして、研究力の向上は大学の足腰を支えるものです。
さて、昨今、橋渡し研究の重要性が社会的に認知され、各大学でTLOの設置がすすみ、シーズの発掘も重要視されています。また、産学連携が活発なアメリカの大学のシステムと比較され、産学連携の為の組織構築を含めて様々な議論が行われています。最近本学でもAROの機能をもった、臨床研究推進センターが設置されました。しかしながら、革新的な新薬、治療技術の発展には、まずは基礎研究こそが第一です。抗体医薬品、分子標的医薬品、核酸医薬品、CART療法、mRNAワクチンなど近年の革新的な治療法は、いずれも地道な基礎研究から生まれたものです。そこで、医学総合研究所は、今あらためて研究の重要性を考えて活動していきたいと考えています。関係者各位の皆様方のご支援をお願い申し上げます。
沿 革
平成10年度、本学は文部科学省・私立大学学術研究高度化推進事業のハイテク・リサーチ・センター整備事業に選定されました。そして、研究組織に「難病治療研究センター」という名前が付けられ、所長として本学出身で、第四代WHO事務局長の中嶋宏先生をお迎えしました。その後、一度組織名が「難治性免疫疾患研究センター」に変わったものの、継続的に文部科学省私学助成を獲得し、着実に研究を発展させてまいりました。そして、平成28年に創立100周年を迎えるにあたり、本学の研究活動及び研究支援体制の強化を目的に、「難病治療研究センター」を発展させる形で「医学総合研究所」が平成22年1月に設立され、3つの研究部門よりスタートしました。
現在では基礎医学研究を強力に推進する3つの研究部門と、研究の推進を全学的にサポート、底上げする5つの共同利用研究部門に拡充し研究を展開しております。